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09/30/2007

古代日本の起源論-日本神話Ⅲ

 ここまでで、日本神話の構成素には、少なくとも先史北方系・南方系・北方騎馬民族系の3つがある-と推定しました。
 今回は、それらの文化複合を、「東アジア人類史」の枠組みから考えます。

◆先史北方からの放散-パレオ・アジア文化
 現生人類はアフリカで生まれました。6.5~5万年前に「出アフリカ」の移動が始まり、4万年前にはユーラシアの東西両端まで放散したといわれます。
 だがその後、2.2万年前をピークとする「最終氷期の最寒期」があり、いったん殖えた人類は、かなり数を減らしたらしい。人類はいくつかの「島」集団に分割され、この間に「人種」としての形質分化が起こりました。また特に北方の集団では、極寒期を耐え抜くため、技術・文化が高度に洗練されました。
 1.3~1.2万年前に氷期がゆるむと、人類の「再放散」が始まります。このとき南シベリアは重要な放散中心の一つとなり、その波動は、北東アジアから北米にまで及びます。このことは【ワタリガラス神話】の分布により確認できます。
【ワタリガラス神話】が見られるのは、シベリア・中国華北・北米の北西部、それにブータンと日本です。(日本の場合、ヤタガラス=ワタリガラスと想定します)
 この太古の「ワタリガラス文化」を、ここではとりあえず、パレオ・アジア文化の名称で括っておきます。シベリアから北日本へ流入した①縄文主力集団は、この系統であるでしょう。
 彼らは【ワタリガラス神話】のほか、【弟=月が姉=太陽を犯す】という日食神話を持っていました。

◆南方から二つの波-オーストロネシア文化
 1.3~1.2万年前には、やはり東南アジアでも、スンダランドを原郷とする「再放散」が起こりました。これがオーストロネシア族です。
 オーストロネシア族の拡散は、インドシナに先住していたアウストロ・アジア族をも巻き込んで、東アジアへの北上波動を引き起こしたと考えます。彼ら(オーストロネシア族+アウストロ・アジア族)は、縄文中期ごろ、西日本へも達しました。ただしこのときの②西日本への漂着集団は、ごく少人数で、①縄文集団の中に融合していったと考えられます。
 のちに東南アジアで、オーストロネシア族は稲作文化を作りだします。これも早くから少数流入者によって日本へ伝えられた。オーストロネシア稲作民の主力集団は、長江の西と東(巴蜀と呉越)へ進出し、ここで大人口となって栄えました。
 けれどもBC1000年紀の後半には、華北からの軍事圧が強まったこともあって、呉越ともに滅亡し、華南は大いに混乱しました。これから③呉越遺民らが、一部は南韓を経由して、また一部はじかに海を渡って(=これが隼人族)、日本へ流入してきます。いわばオーストロネシア族渡来の第二波です。
 この②③系統の神話には、【殺される作物女神】【失くした釣り針】【蛇身出産】などが挙げられます。

◆大陸からの騎馬民渡来-ツングース+モンゴル文化
 ふたたび北方に目を向けると、おそらくBC4000~2000ごろ、南シベリア~モンゴル高原あたりで「アルタイ系3族」の放散が起こりました。西のテュルク族、中央のモンゴル族、東のツングース族です。
 このうち西のテュルク族は、早くから西域の印欧祖族(いわゆるアーリア族)と混融し、西の文化を東へ運ぶ「橋」の役目を果たしました。
 BC1000年紀に入ると、これら大陸諸族の遊動が激しくなり、華北では大動乱が繰り返されます。そのたび大量の流亡民が、山東半島(斉)や朝鮮半島(衛氏朝鮮や馬韓を形成)になだれ込んだ。
 BC1000紀の後半には、朝鮮半島に、2つの強大な勢力が入ってきます。④旧満州から南侵した扶余族(ツングース系)と、⑤華北から逃れてきた秦亡民(主力はモンゴル系)です。
 ④扶余族は、厳しい血統規律と武勇を誇った戦士団です。扶余・高句麗・東濊らを支配したほか、馬韓(のちの百済)でも盟主の地位(辰王)を押さえました。【天から霊峰への王祖降臨】は彼らの建国神話です。
 いっぽう⑤秦亡民は、もとは斉・趙・燕らの民で、辰韓(のちの新羅)に移住して栄えました。流動性のたいへんつよい集団で、西域民の混入もあり、先進的な金属文化を知っていた。【三種の神器信仰】やスキタイ型の【冬至神話】は、おそらく彼らが伝えたものです。
 弁韓(伽耶)では、⑤秦豪族が④扶余王家をかつぐかたちで支配層を形成し、③呉越系の平民らを押さえたもの-と推定します。
 この「南韓混成集団」が、何波にも渡ってだんだんと列島へ渡来し、先住集団(①②および③の一部)を取り込んだり蹴散らしたりしながら、「日本」の原核をつくっていった-と思うのです。

◆わからないこと
 以上、仮説を並べましたが、どうもなかなか複雑です。なにしろ一万年以上の歴史をまとめようとしてるので、簡単でなくて当たり前です。
 僕にどうしてもわからないのは、この①~⑤の混合比です。とりわけ①③⑤の三つには「多数派」たる可能性があり、これはいわば日本人の「主成分」を決定する問題です。
 頼みの綱は生理学だが、今のところ、ATL・肝臓酵素・血液型・耳垢遺伝子…らの指標からいろいろな仮説が出ており、これがお互い整合しません。国外諸族との比較データも、絶対的に不足している。
 この解答は、おそらくは、データがもっと出揃うのを待つしかないでしょうね。

〔過去関連記事〕
*先史人類の放散について-「人類がたどってきた道」「図説・先史祖族の起源」
*アジアの民族移動-「漢族の形成」「魏志東夷伝の世界」「オーストロネシア人とは?」
*弥生人の形成-「民族大移動の弥生人」「倭族と日本人のつながり」

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