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09/25/2007

日本神話の「北方」要素-日本神話Ⅱ

 今回は、日本神話の「北方」要素に目を向けます。

◆女神が犯され闇になる-スキタイ系の冬至神話?
 まずアマテラスの有名な神話を見てみましょう。

荒ぶる弟スサノオが、高天原へ押し入った。彼が馬を投げ込んだため、アマテラスに仕える織女は女陰を突かれて死んだ。驚きと憤りから、アマテラスは岩屋に籠もり、そのため世は闇になった。困った神々は岩屋の前でわざと騒ぎ、ウズメが性器を露出して踊るなどして、アマテラスを岩屋から引っぱり出した。

 これは太陽の死と再生を象徴した【冬至神話】だといわれます。
 またこの話は、ほんらいは、「スサノオがアマテラスを犯したため、アマテラスは岩屋に籠もった…」という形だったといわれます。なるほどその方がシンプルです。のちにアマテラスが王権と結合したので、その強姦は語ることができなくなり、織女がいわば「身代わり」に殺された…。この解釈は説得力を持っています。
 ところでギリシア神話には、これに酷似の【冬至神話】が見られます。

大地の女神デメテルは、馬に化けたポセイドンによって犯された。彼女は憤って洞穴に籠もり、そのため地上は枯れ果てた。困ったゼウスは、女神モイライに説得させ、やっとデメテルを洞穴から引き出した。
③デメテルは、ハデスによって娘ペルセポネーをさらわれ、憤って食を断ち放浪した。だがある王の館に来たとき、侍女バウボが性器を露出させ滑稽なしぐさをしたので、デメテルも笑いを取り戻し、断食をやめた。

 古くはポセイドンは地底神で、ハデスと同一であったらしい。また母デメテルと娘ペルセポネーも、もとは同一神格の分身といわれます。そこで②③は同じ原話から派生した異伝だと見られている。
 するとデメテル=アマテラス、ポセイドン=スサノオ、バウボ=ウズメというきれいな一致点が見いだせます。①と②③がこれほど似ているのは何故でしょうか?
 大林太良氏や吉田敦彦氏らは、日本とギリシアには同じ文化の影響が及んでおり、それは中央アジアに発した騎馬民文化(スキタイ文化)である-と説いています。

◆太陽が月に犯される-先史北方の日食神話?
 さて大林氏・吉田氏らの説は、じゅうぶん説得的であるけども、それだけではこの神話の解として不足ではないか…と僕は思う。太陽=姉神であるアマテラスと、大地=母神であるデメテルには、異なった点も多いからです。
 ところで僕は、前回で、「スサノオにはツクヨミが習合されている」と推定しました。そこで①の話式において、スサノオをツクヨミに置換すると、

荒ぶる弟=月が、姉=太陽を犯した。

 という原話が導けます。これは【日食神話】になります。
 すでに「太陽神話考Ⅱ」で述べたよう、【姉=太陽/弟=月】という役づけは、先史北方文化の普遍型です。さらに「弟=月が姉=太陽を犯す」という【日食神話】も、北方文化の古型を保存するエスキモーが伝えている。そこでは弟=月神は、荒々しい侵犯者と見なされているのです。これはスサノオ=ツクヨミ像に近似します。

 ときに前回、【殺される作物女神】の話を採り上げ、それが南方系であることを解説しました。だが彼女の殺害者がツクヨミ(=スサノオ)であることは、南方起源では説明がつきません。「暴力的な月神」は、おそらく先史北方文化から流入した要素であると考えます。

◆二つの北方系+さらに南方系
 以上を考え併せると、日本神話には、先史北方系・北方スキタイ系・南方オーストロネシア系の(少なくとも)3要素が混合されているようです。
 次回は、もうすこし視野を広げて考えます。

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