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10/19/2007

天孫「先遣失敗」の謎-書紀解論(六)

 今編(二)で提示した「★ヤマト建国仮説」の続解です。

◆天孫「先遣失敗」とは?
【天孫降臨】神話には、奇妙な前フリがついています。たび重なる先遣者の失敗です。『書紀・神代下紀』から抽出しましょう。

天神タカミムスビは、まずアマノホヒ、ついでその子タケミクマを葦原中国へ先遣した。だがこの二人は、オオナムチにおもねって復命しなかった。
②タカミムスビは諸神に諮り、アマノワカヒコをまた降した。だが彼もまた、オオナムチの娘を娶り、「私も葦原中国を治めよう」と宣言して背命した。
③さらにアマノワカヒコは、タカミムスビの使者を射殺し、新嘗王のする収穫儀礼)を行った。だがその直後、タカミムスビの「返し矢」を受けて彼は死んだ
④高天原では、アマノワカヒコの葬儀が盛大に行われた。ところがそこに、彼と瓜二つのアジスキタカヒコネが現れ、故人の親族たちは「アマノワカヒコが生きていた!」と狂喜した。死者と間違われたアジスキタカヒコネは、怒って喪屋をぶち壊した。
⑤今度は、タケミカヅチ・フツヌシらの武神たちが派遣され、オオナムチとその子コトシロヌシを幽界へ退去させた。
⑥このあとアマノオシホミミが降されることになったが、そのとき彼の妃が子を産み、降臨役は子に替えられた。こうして天孫ホノニニギが日向へ天下ることになった…。

 この⑥には注釈が必要です。
『書紀』の「本文」では、初めから「ホノニニギ降臨」が予定されていたと語られます。だが同「一書第一」また「一書第二」では、「オシホミミ降臨予定→ホノニニギへ交替」のかたちになっています。
 だいたい『書紀』は、たいていの場合、「本文」が政治操作の最終型になっています。ここは降臨交替を説く「第一」「第二」の方が原型に近いと見て、⑥をそのかたちでまとめました。
 ともあれ、以上はえらく複雑な展開です。もし「降臨」を言いたいだけなら、①~④先遣失敗や⑥降臨役交替のエピソードは必要でないはずだ。「国譲り」されたのが出雲なのに、「降臨」の地が日向であるのも筋がおかしい。さらに『古事記』は次の異伝を拾っています。

⑤’オオクニヌシの2子のうち、コトシロヌシはすぐ降ったが、タケミナカタは力ずくで抵抗した。タケミカヅチが彼を破り、東国諏訪まで追って降伏させた。

◆アマノワカヒコの謎
 すでに(四)で述べたよう、神話【天孫降臨】は、史実【神功東征】ダブレット変換によって構築されたと見なせます。話の構造に多くの共通点があるからです。いま仮に主な配役を対照させると-

タカミムスビ 【司令者】 -重臣団
タケミカヅチ 【征服者】 -武内宿禰
タケミクマ 【派遣将軍】 -武振熊
オオナムチ 【幽界の大王】-オオタラシヒコ(景行)
コトシロヌシ 【弱い抵抗者】-カゴサカ王
タケミナカタ 【強い抵抗者】-オシクマ王
アマノオシホミミ【嫡子】 -ワカタラシヒコ
ヨロズハタトヨアキツヒメ 【嫡孫の母】 -オキナガタラシヒメ(神功)
ホノニニギ 【嫡孫】 -ホムダワケ(応神)

 これはとうてい無視できない一致だと考えます。
 ところで、一見したところ、神話には対応の取れない人物もいるようです。たとえばアマノワカヒコだ。これはとても不思議な人物です。何故かというと-

1)神話文脈で言えば、地上の王としてオオナムチ(大国主)がいるはずなのに、アマノワカヒコは自身「王」として振る舞っている。
2)「背命者」アマノワカヒコの存在感はとても強く、対して「天の嫡子」アマノオシホミミは影が薄い。
3)天神たちは、アマノホヒ(出雲国造の氏祖)やタケミクマ(和邇・海部の氏祖)は罰してないのに、アマノワカヒコだけは抹殺している。
4)④の「葬儀混乱」の意味が全く取れない。

 この謎がきれいに解ける「推測解答」を、僕は示すことができます。でも結論を出す前に、ほかの問題をもうちょっと詰めてみます。

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