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10/14/2007

【天孫降臨】は【神功東征】の異伝である-書紀解論(四)

 今回は、僕の「仮説づくり」の方法論について、手の内を明かしておきます。

◆『書紀』編集はどう行われたか?
 前回では、【オオタラシヒコ大王伝承】がいくつものパーツに分解・変換された-という仮説を述べました。この種の作為は、『書紀』の各所にあるようです。
 ときに遠山美都男氏は、『書紀』制作について面白い指摘をしています。制作者たち(藤原不比等ら)は、諸族や各地から膨大な「木簡」記録をかき集めて、それを広間に持ち込んで、時代ごとに並べ替えして、編集作業を行ったろう-というのです。
 集められた大量の木簡には、同一の話なのに細部の食い違う「異伝」がいっぱいあり、また同一人物が「別称」で記されるなど、ひどい混乱があったはずだ。制作者たちが頭を抱えたさまが見えるようです。
 さらに時代が古くなるほど、情報量じたい乏しくなり、混乱した神話ばかりになってしまう。『書紀』が、特に神代あたりで、むやみに「また一書はいう…」と異伝を記すのは、その混乱を整理できなかった結果です。

◆上代「空白」の中の3王
 ここからは、僕の想像です。文字が普及していなかった頃であり、時代を遡ってゆくほど、王統譜の実体はつかめなくなったはずだ。定説では、「雄略朝」から簡易な記録がつけられ始め、「欽明朝」後は詳しく正確な記録が取られた-とされています。しかし「雄略」以前については、目立つ王の事績しか把握できなかった可能性がとても高い。とりわけ応神のところまでだと、

ⅰ)ナラで「初王」となったミマキイリヒコ(崇神)
ⅱ)日本中~西部で「大王」となったオオタラシヒコ(景行)
ⅲ)大王死後の動乱を経て即位したホムダワケ(応神)

 -の3王を「核」とする伝承群しかなかったろう…と僕は察する。むろん他にも多くの王がいたに違いないが、目立たぬ王たちは、時間の闇にうずもれてしまったのです。目立たぬ王についての記憶が、目立つ王に吸収された-ということもあるでしょう(甲州の史跡が何でも「信玄ゆかり」にされているように)。
 むろん『書紀』の制作者らは、王統起源をなるたけ古くしたかったから、これにはたいへん困ったはずだ。時間の闇の「空白」を、何としても埋めねばならない。
 そこで彼らは、上代史を構築するため、次のような操作を行ったと考えます。

架空の王を挿入する(欠史八代・成務)。
②ある王の像を分解して、別の王をつくり出す(崇神から神武、景行からヤマトタケル・仲哀)。
③一史実から派生した「異伝」を、異なる事件として別立てする。

 ③はいわゆるダブレットであり、これは以前に解説したことがあります(→★邪馬台国③)。
 このダブレットを意図的につくり出す作業は、具体的には、「木簡の束」を並べ替えることで行われたはずだ。たとえばある史実についての「異伝」の束を、そこから移動して、神代に挿入する-といった操作です。『書紀』にはこれの痕跡が何ヶ所も見いだせます。

◆【神功東征】と【天孫降臨】の重複関係
 では③の具体例を一つ挙げます。僕がダブレットであると見るのは、たとえば次の部分です。

-神功皇后の【畿内東征】戦記
-天孫ニニギに王権が授与された【天孫降臨】神話

 神話aは、史実Aのダブレット変換によってつくられたと考えます。じっさい両話の間には、面白いほどたくさんの構造一致が見いだされる。主なものだけ、三つ挙げます。

①Aでは「武振熊&武内宿禰」の2将軍が活躍し、aでは「タケミクマ」についで「タケミカヅチ」が派遣される。
②Aでは2王子が抵抗し、特にオシクマ王は東国勢とも結んで猛烈に抗戦する。aでは大国主の2子が抵抗し、特にタケミナカタは東国まで逃れて抗争する。
③Aでは幼王子「ホムダワケ」の王権がはじめから約束され、aでは出生と同時に天孫「ホノニニギ」の国土支配が決せられる。

 これほどの構造一致は偶然でないでしょう。史実Aの異伝を利用して、神話aが構築されたのは明らかです。
 こうしたダブレットは、他にも発見できるので、ここから面白いことが出てきます。ただの「神話」だと思われていたパーツも、対応する「史実」が特定できるなら、「史実」復元の補完材料に利用できる-ということです。
 僕がこの(二)で提示した「★建国仮説」は、このようなダブレット解析の技法によって組み立てたものなのです。

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